1. QuantLibを使ってみる
1.1 ダウンロードとインストールとビルド
1.1.1 はじめに
冒頭(前ページ)で述べた通り、実践編では、QuantLib を使って、様々な金融商品の価格計算が、どのようにして具体的なコンピュータープログラムに落とされているかを見ていきます。
ここで再度、QuantLibがどのようなものか説明すると、
- 様々な金融商品の価格計算アルゴリズムを
- C++言語を使って
- オブジェクト指向プログラミングの手法でクラス階層に抽象化した
- オープンソース・ライブラリです。
そして、これを使いこなすには、繰り返しになりますが、最低限でも次のような知識が必要になります。
- C++のシンタックス。基本レベルのみならず、オブジェクト指向プログラミングの技法やデザインパターンの使い方まで、ある程度理解しておく必要があります。
- 金融工学に関するハイレベルの知識。および、それを理解するのに必要な数学の知識。(様々なオプションモデルから金融商品の価格を、解析解、あるいは数値解を使って導出するテクニック、SolverやOptimizer、高速な行列演算の手法 等々)
- かなり広範な金融商品と取引慣行の実務知識。
このサイトの想定読者は、大学などで金融工学を専門に研究されている方、金融機関で、証券やデリバティブズのトレーディングやリスク管理やプロダクトコントロールをされている方、あるいはこれからそれを目指される方々です。従って、上記のような知識を、すべてではないにしても、基本的な部分は理解されているという前提で話をすすめます。
想定読者の方々は、金融工学や、金融実務の知識は、ある程度持っておられると推察します。しかし、C++の知識については、クオンツアナリストなどの限られた職務以外の方は、なかなか触れる機会は無いと思います。C++に全く馴染みのない方は、数週間から数か月かけて、ある程度基本的なシンタックスについては学んでおいて下さい。それが無いと、これからの解説は、まったく理解できないと思います。
さて、QuantLibを使ってみるには、最低限、以下のものが必要になります。
- C++言語の開発環境(Visual Studioを推奨。C++での開発経験のある方は、他のC++開発環境でもかまいません)
- QuantLibのソースコード・ライブラリ
- Boostのライブラリ
これらは、すべてオープンソースとして無料でダウンロード出来ます。今後、実践編の解説のベースになるので、これらのインストール方法を次のセクションで解説します。2019年に、当時のバージョンでのインストール方法を解説しましたが、その後のバージョンアップに合わせ、現時点(2023年11月)における最新バージョンのインストール方法を解説します。
<ライセンス表示>
QuantLibのソースコードを使う場合は、ライセンス表示とDisclaimerの表示が義務付けられているので、添付します。 ライセンス