基礎編 1 キャッシュフローと金利
1.1 キャッシュフロー
すべての金融商品は、将来発生するCash Flowの集合と見做す事ができます。
預金、債券、ローンなどは、将来発生するキャッシュフローの金額と時期が、ほぼ確定している金融商品です。これらの商品カテゴリーが、英語でFixed Incomeと呼ばれる所以です。一方、株式は一定の保有期間内に受け取れる配当金のキャッシュフローと、将来それを売却した場合に受け取れるキャッシュフローの集合と見做せます(あるいは倒産等により会社を清算した後に受け取れるキャッシュフロー)。但し、そのキャッシュフローの額やタイミングが不確定な金融商品といえます。
金利スワップは最も取引されているデリバティブズで、固定金利と変動金利キャッシュフローの交換契約ですが、将来発生するプラスとマイナスのキャッシュフローの集合と見做せます。但し、変動金利のキャッシュフローは、名前の通り将来の金利インデックスの動きに連動して変化するので、現段階では確定していません。
また、オプションの場合、将来発生するキャッシュフローは、オプション行使により受け取る額(Payoff)になりますが、その額は行使日の対象商品の価格分布に依存するもので、その発生金額と発生時期に不確実性がある商品と見做せます。
そうすると、すべての金融取引は、キャッシュフローと現金の交換契約か(債券の売買など)、キャッシュフロー同士の交換契約(スワップなど)と見做せます。
このように、金融商品や金融取引をキャッシュフローの概念を使って抽象化・一般化する考え方は、オブジェクト指向モデルで構築された、デリバティブズの取引管理システムでよくみられます。金融商品は多種多様で、それらを網羅するシステムを構築するのは至難の業ですが、基本概念を抽象化・一般化する事によって、できるだけ多くの商品に対応可能なシステムを作ろうとするものです。しかし、実際の金融商品は、あまりに多様な為、すべての商品に対応できるようなシステムは、未だに存在していないのではないかと思います。