基礎編 2. 金利の期間構造
2.6 イールドカーブの構築方法(2) Bootstrapping + Interpolation法
2.6.8 データソースに金利スワップを加える
イールドカーブの中期から長期のゾーンは、金利スワップの固定金利をデータソースとして使います。これまでのデータに、1年物のスワップ金利を加えて、カーブを構築してみます。
今、期間1年の金利スワップの固定金利レートが次のような場合を想定します。
- 固定金利レート : 1.5%
- 固定金利支払い回数 : 年2回
- 固定金利日数計算方法 : Actual / Actual
- カレンダー : ロンドン + 対象通貨の国のカレンダー
- 休日の取扱い : Modified Following
- スタート日 : 2営業日後
- エンド日 : 2営業日後 + 1年
Pillar は、スタート日、一回目の固定金利クーポン日、そしてエンド日になります。スタート日は既に \(T_2\) として設定されています。1回目の固定クーポン日\((T_8)\) とエンド日\((T_9)\) を新たなPillarとして追加します。繰り返しますが、本来なら、Pillarはデータソースを決めた段階で、最初にすべて設定します。
キャッシュフローは、LIBORの時と同じく、PV=1はスタート日基準(2営業日後)なので、その日の\(DF(T_2)\) でさらに割引く必要があります。クーポン日には固定金利クーポンのみ発生しますが、エンド日はみなし元本をキャッシュフローに加えます。これで、次の様な方程式が成立します。
\[ \small \begin{array} \ PV_7\times DF(T_2)-CF_7 (T_8)\times DF(T_8)-CF_7 (T_9)\times DF(T_9)&=& 1\times DF(T_2)-0.015\times 182/365\times DF(T_8)-(1+0.015\times 183/365\times DF(T_9)) \\ \ &=& 0+0+1\times DF(T_2) … -0.007479\times DF(T_8) -1.007521\times DF(T_9)=0 \end{array} \]これを、行列に加えます。
\[ \small \left( \begin{array}{rrrrrrrrr} 1 & -1.000028 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & -1.000028 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 1 & -1.000194 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 1 & 0 & -1.001076 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 1 & 0 & 0 & 0 & -1.00345 & 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 1 & 0 & -1.00344 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 1 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & -0.007479 & -1.007521 \\ \end{array} \right) \left( \begin{array}{c} 1\\ DF(T_1)\\ DF(T_2)\\ DF(T_3)\\ DF(T_4)\\ DF(T_5)\\ DF(T_6)\\ DF(T_7)\\ DF(T_8)\\ DF(T_9)\\ \end{array} \right) = \left( \begin{array}{c} 0\\ 0\\ 0\\ 0\\ 0\\ 0\\ 0\\ 0\\ 0\\ 0\\ \end{array} \right) \]式の数が7個に対し、未知数が9個となりました。先ほどと同様に、DFに関してInterpolationの方法を決めます。 金利先物の場合は、未知数\(DF(T_5)\) に対し、その両側の\(DF(T_4)\) と\(DF(T_6)\) が解っていたので、線形補間で簡単に解が求まりました。今度は、\(DF(T_8 )\) と、\(DF(T_9)\) が未知数で、その両側に既知の値が無いので、簡単には求まりません。
この場合、\(DF(T_9)\) に一定の推定値を与え、何等かのInterpolation法で\(DF(T_8)\) の推定値を求めます。この2つの推定値を方程式に代入し、右辺が 0 になるように\(DF(T_9)\) を少しずつ動かしていきます(その結果DF(T_8)も少しずつ動く)。右辺が 0 になるまで(正確には0近辺の許容範囲内になるまで、)再計算し、許容範囲内に入った時点で計算を止めます。その時の\(DF(T_8)\) と\(DF(T_9)\) が解になります。コンピューターは、こういった再計算アルゴリズムを得意としており、Solverと呼ばれています。ExcelのSolverを使った計算した結果、\(DF(T_8)=0.9929,\ DF(T_9)=0.9851\) となりました。
解析的には、9個の未知数に対して、7個の商品の価格方程式しかありませんが、Interpolation法で使われる“制約条件”が不足している方程式の数を補っています。
これで、期間1年までのすべてのPillarに対応するDiscount Factorが求まりました。Interpolationの方法も決めたので、期間1年までの任意の時点のDiscount Factorも求まります。これでDiscount Curveが完成です。そこから任意の時点のZero Coupon RateとForward Rateも簡単に求まります。