基礎編 2. 金利の期間構造
2.5 イールドカーブの構築方法(1) パラメトリック法
2.5.1 イントロダクション
期間構造まで考えてイールドカーブを構築する方法は、大きくわけて
- パラメトリックモデル (Nelson-Siegelモデル、Svenssonモデルなど)
- Bootstrapping + Interpolation
- 瞬間短期金利の確率過程からアフィン変換を使う
の3種類あります。この3種類は、構築方法も、使用目的も全く異なります。
パラメトリックモデルは、イールドカーブ全体を、複数のパラメータによる多項式で表現しようとするものです。限られたパラメータで、市場で観測される特徴的なイールドカーブの形状を表現できます。Nelson-Siegelは5種類のパラメータ(簡略版は4種類)、Svenssonは6種類のパラメータを使って、(i) 右上がりのnormal yield curve、(ii) 右下がりのinverted curve、(iii) 最初は右上がりで、ある時点を過ぎると右下がりになるHumped curve を表現できます。いずれも、無限遠で発散する事なく、一定の値に収束します。
この方法によって描かれたイールドカーブは、必ずしも、市場実勢利回りを示す点を通るとは限りません。従って、このカーブはデリバティブズの時価評価には使えません。市場実勢と乖離が発生し、裁定機会が生まれるからです。この方法は、イールドカーブが内包している将来の金利予測機能を、パラメータで体現しており、従って、主にそういった目的の為に使われているようです。例えば、経済学者は、金利の期間構造の説明に使い、中央銀行などは、金融政策の指標として使っているようです。
時価評価に使えないので、金融実務であまり使われる事はありませんが、1980年代から90年代にかけて、大手金融機関やヘッジファンドなどが、イールドカーブのConvergence Trade(割安銘柄を買って、割高銘柄を売り、価格が収斂していく過程で利益を上げる取引)を行う際に、独自のパラメトリックモデルを使って割安・割高の判断をし、収益機会を探していました。
Bootstrapping + Interpolation法は、主にLIBOR・Swapカーブの構築の際に使われる方法で、この方法で作られたカーブはデリバティブズの時価評価に使われます。2.4のセクションで説明した、人工的に作られたゼロクーポン債の価格(Discount Factor)、Zero Coupon Rate、Forward Rateの導出方法は、このBootstrappingの方法を簡単に述べたものです。
3番目の方法は、金利オプションの価格計算をする過程で、瞬間短期金利の確率過程から金利のTerm Structureを構築する方法があります(Affine Term Structure)。これも、上記2種類の方法とは、構築方法も使用目的も全く異なりますが、ここでは触れません。上級編の金利オプションのShort Rate Modelの所で、解説しようと思います。