上級編 5.  マルコフ汎関数モデル 

5.3   ニュメレール価格の確率分布の導出法

5.3.4   フォワードスワップ金利からニュメレール価格を導出

5.3.3 で、\(T_i~ 時間軸上の、すべての状態変数~ x_K\) (以下 \(x_{T_i}^{(k)},~~k=~-m,…,0,…,~+m\) と表記)に対応するデジタルオプションのストライク K(すなわちフォワードスワップ金利の分布、以下 \(K^{(k)}=S(x_{T_i}^{(k)})\) と表記)が求まれば、そのフォワードスワップ金利とニュメレール価格を関係づける事で、ニュメレール価格の確率分布を導出きます。 

各状態変数\(x_{T_i}^{(k)}\) に対応するニュメレール価格を \(N(T_i,T_n,x_{T_i}^{(k)})\) と表記します。このニュメレール価格とフォワードスワップ金利は、下記式を使って関係づけられます。(ゼロクーポン債価格と Par スワップ金利の関係に関する公式を使っています。) 

\[ \begin{align} S(x_{T_i}^{(k)}) & = \frac{1-N(T_i,T_n,x_{T_i}^{(k)})}{Annuity(T_i,T_i,T_n,x_{T_i}^{(k)})} = \frac{1-N(T_i,T_n,x_{T_i}^{(k)})}{∑_{j=i+1}^n \tau _j~P(T_i,T_j,x_{T_i}^{(k)})} \\ & =\frac{1-N(T_i,T_n,x_{T_i}^{(k)})}{N(T_i,T_n,x_{T_i}^{(k)}) ∑_{j=i+1}^n \tau _j E^{Q_N} \left[ \frac{1}{N(T_j,T_n,x_{T_j})}~|~ x_{T_i}^{(k)} \right]} \\ & =\frac{N(T_i,T_n,x_{T_i}^{(k)})^{-1}-1} {∑_{j=i+1}^n \tau_j E^{Q_N} \left[ \frac{1}{N(T_j,T_n,x_{T_j})}~|~x_{T_i}^{(k)} \right] } \tag{5.14} \end{align} \]

1行目の右辺の分母にある Annuity すなわち複数のゼロクーポン債価格は、5.4 式を使ってニュメレールとの相対価格の期待値演算(汎関数)に書き換えています。この式をさらに書き換え、\( N(T_i,T_n,x_{T_i}^{(k)})~を~ S(x_{T_i}^{(k)})\) の関数として表現できます。 

\[ N(T_i,T_n,x_{T_i}^{(k)})=\frac{1}{S(x_{T_i}^{(k)}) ∑_{j=i+1}^n \tau _j E^{Q_N} \left[ \frac{1}{N(T_j,T_n,x_{T_j})}~|~ x_{T_i}^{(k)} \right] +1 } \tag{5.15} \]

この式が意味するのは、\(T_i\) 時のニュメレール価格を、先ほど求めたフォワードスワップ金利 \(S(x_{T_i}^{(k)})\) と、\(T_{i+1}\) 時以降のニュメレール価格の確率分布から求める事ができるという事です。 右辺の分母にある期待値演算 \( E^{Q_N} \left[ \frac{1}{N(T_j,T_n,x_{T_j})}~|~ x_{T_i}^{(k)} \right]~ に必要な~ N(T_j,T_n,x_{T_J})\) の確率分布は、時間軸の最終期日 \(T_n\) から遡りながら求めます。次にそのアルゴリズムを説明します。 

 

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