基礎編 2. 金利の期間構造 

2.6 イールドカーブの構築方法(2) Bootstrapping + Interpolation法

2.6.2 データソースの決定

まずイールドカーブ構築の原データ(Raw Material)となるデータソースを決める必要があります。その決め方はProfessional Judgement(経験と勘)に依存します。この原データの利回りを繫いだものが、Par Curveになります。 

LIBOR・Swapカーブの場合、データソースは、 

  • (i) カーブの手前(オーバーナイトから、6カ月~1年くらいまで)、
  • (ii) その隣(6カ月~2,3年)、
  • (iii) さらにそれより長い期間、

で、別々の商品を使って、それを繫ぐ方法が一般的でした。ドル金利のLIBOR・Swap curveであれば、 

(i) は、ロンドンでのインターバンク預金金利(いわゆるLIBOR)、
  (ii)は、ユーロドル金利先物(3Month Euro$ Futures)、あるいはLIBOR金利のFRA(Forward Rate Agreement)
  (iii)は、金利スワップの固定金利
  を使うのが一般的でした。 

これら商品構成は、通貨や市場環境によって異なるので、決まったルールがある訳ではなく、どの商品を使うかについては、商品の流動性やレートの妥当性を見て個別に判断する必要があります。決まったルールがなく、ケースバイケースで実務者の判断に依存する場合、Professional Judgementという言葉を使う事がありますが、まさにそういった決め方になります。 

その他に、カレンシースワップのイールドカーブであれば、Basis SwapやFXフォワードなどもイールドカーブ構築のRaw Materialになります。 

<タイミング>  

商品の選択以外に、市場実勢レートの公表タイミングの差にも注意する必要があります。 

上記のように、種類の異なる商品のレートを使ってカーブを描こうとする場合、それぞれの商品によって、データの公表時点が異なっており、その微妙な修正に注意が必要です。短期ゾーンで使われるLIBORやTIBOR金利は、ICE Benchmark Administration Ltd.(かつてのBBAに取って代わった機関)や全銀協が公表するレートを使うのが一般的ですが、公表は1日1度で、かつ他の商品の公表タイミングと一致しません。日中に市場が激しく動いた場合、タイミングの差によるカーブの歪みが発生する可能性があります。金利先物は、先物取引所がクローズ後に精算値が発表されますが、LIBOR公表から半日程度経過しています。 

<データソース> 

スワップ金利は、かつてはOTC取引が中心で、市場レートは、BloombergやReuters社が公表するスクリーンレートを使うのが一般的でした。BloombergやReutersは、様々なブローカーから集めた市場実勢レートを、何等かの方法で集計したものを、常時スクリーンで公表していますが、データ更新のタイミングやデータソースの正確性を保証していません。流動性の低い年限のスワップ金利は、長期間更新されないような事例もあり、注意が必要です。 

リーマンショック後、CCP(Central Clearing Party)への清算集中義務がスタートし、CCPが公表するレートが、これに取ってかわろうとしています。CCPは、毎日精算値を決める為のレートを公表しており、非常に質の高い市場データとなっています。但し、通常CCPの精算レートの発表は、当日の午後遅くであり、午前中に発表されるLIBORとは、半日程度タイミングがずれる事になります。 

異なった発表タイミングのデータを使って一本のカーブを描こうとすると、時間がずれた間に発生した市場の動きが反映されない可能性があるので、これを修正しなければなりません。 

 

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