上級編 6.  Libor Market Model 

6.2  古典的なLibor Market Model

6.2.6   スポットLibor測度、およびターミナル測度

LMM における同時分布確率測度として、よく使われる確率測度を紹介します。また、それぞれの確率測度の下で、各 Libor のドリフト項を導出してみます。 

<  ターミナル測度  >

ニュメレールとして、最長期の Libor のエンド日(\(T_N\))を期日とするゼロクーポン債を選択した場合の確率測度をターミナル測度(以下\(Q_N\)と表記します)と呼んでいます。この確率測度下では、最長期の Libor はマルチンゲールになります。しかし、Arbitrage Free の条件を満たすために、それ以外の Libor には、3.36 式にあるようなドリフト項を付ける必要があります。 

\[ dL_k(t)=-L_k (t)\sum_{j=k+1}^N \frac{τ_j L_j (t) ρ_{j,k} σ_k(t)σ_j (t)}{1+τ_j L_j (t)} + L_k(t)σ_k(t)~{\bf c_k∙dw^{Q_N}}(t),~~~~N > k \tag{6.36} \]

ドリフト項の符号がマイナスになっているのは、イールドカーブの長い側を基準に短い側を見た場合、短い方は Convexity 価値が相対的に低い(価格に含まれるオプション価値が小さい)からです。すると、ニュメレールより短期の Libor は、時間経過によるオプション価値の減少スピードが小さくなる(利回りの上昇スピードが遅くなる)ので、ドリフト項はその分を調整している事になります。 

ターミナル測度は、フォワード Libor ベクトルの確率過程をシミュレーションする際、最後まで同じニュメレールを使う事ができるので、判りやすいとともに、(次のスポット測度と比べて)モンテカルロシミュレーションを高速化するためのテクニックが使いやすくなります。これについては、別の機会に解説する予定です。 

 

<  スポットLibor測度  >

スポット Libor 測度とは、ニュメレールとして、Libor で継続運用する資金口座を使った場合の確率測度になります(以下\(Q_s\)と表記します)。Libor で継続運用するとは、現在 1 の資金を、まずイールドカーブの一番手前の Libor で運用し、そのエンド日に受け取る元利合計をそのまま、その日がスタート日となる次の Libor で運用し、さらにそれを、カーブ上の最終テナーの Libor まで継続する事を意味します。リスク中立測度で言う、瞬間短期金利で継続して複利運用した資金口座に似ていますが、それの離散時間版のようなものです。考えようによっては、まずニュメレールとして直近の Libor のエンド日を満期日とするゼロクーポン債価格を選択し、その満期日に、次の Libor のエンド日を満期日とするゼロクーポン債にニュメレールを変換すると見做してもいいと思います。確率過程を、時間と追ってシミュレーションする場合、途中でニュメレールを変更するのも可能です。経済的には、確率変数のリスクを、それまで使っていたニュメレールから、新たなニュメレールのリスクにReplicateし直す事を意味します。Arbitrate Pricing Theoryでは、取引戦略は、Self-Financingで行われるので、途中でニュメレールを変更しても、それまでと同じ資金量で新たな取引戦略が構築できます。 

その場合、\(L_k(t)\) の SDE に発生するドリフト項は、6.33 式と同じになります。 

\[ dL_k(t)=L_k (t)\sum_{j=1}^k \frac{τ_j L_j(t)ρ_{j.k} σ_k(t)σ_j (t)}{(1+τ_j L_j (t) )} + L_k(t)σ_k (t)~{\bf c_k∙dw^{Q_s}}(t),~~~~ \tag{6.33} \]

測度変換をしても拡散項係数は、全く同じなので、途中でニュメレールを変更しても、ドリフト項も拡散項も6.33式のままで影響を受けません。

 

以上で、LMM の導入部分の解説が終わりました。これから、LMM の最も大変な部分、すなわち拡散項係数の関数形、すなわち Volatility 関数と相関行列の特定の説明に入ります。 

 

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