基礎編 1 キャッシュフローと金利 

1.2 金融商品の価格

金融商品の価格とは、将来発生するすべてのキャッシュフローを、一定の金利で割引いて現在価値(Present Value)に換算し、その合計と考える事ができます。  

将来発生するキャッシュフローが確定的であれば、単にキャッシュフローを現在価値に換算し、それを合計するだけです。  

将来発生するキャッシュフローが不確実な場合はキャッシュフローに、その発生確率を掛けて現在価値を計算します。
 オプションであれば、対象資産の将来の価格変動について、一定の確率分布を想定して、オプション行使によって発生するキャッシュフロー(Payoff)の期待値を計算します。  

クレジットデリバティブズであれば、その固定金利キャッシュフローの方は、対象クレジットがデフォールトしない確率(キャッシュフローの生存確率 survival rate)をかけて期待値計算を行い、それを現在価値に引き直します。一方、変動金利キャッシュフローすなわちdefault paymentについては、デフォールト時の損失額に、デフォールト確率をかけて、それを現在からデリバティブズの満期まで積分して期待値計算を行います。  

以上の考え方を簡単な式の形で表現すると  

$$ 金融商品の価格 =\sum CashFlow_i (T_i) \times Probability(CashFlow_i) \times DiscountFactor(T_i) $$

となります。

 

すべてのデリバティブズ取引は、取引時点で、現在価値が等価なキャッシュフローの交換と見做せます。
 金利スワップでは、交換される固定金利のキャッシュフローと変動金利のキャッシュフローの現在価値は、取引時点で等価です。オプションの場合、オプションの行使によって発生するキャッシュフロー(Payoff)の期待値の現在価値と、オプションプレミアムの現在価値は、取引時点で等価です。  

金融工学の中で、Quants Financeと呼ばれる分野は、端的に言えば、様々なキャッシュフローの現在価値の計算方法を研究している分野と言えます。言い換えると、先ほどの式で
「\(Probability(CashFlow_i)\)と\(DiscountFactor(T_i) \)をどう決めるか?」
を研究している分野です。

以下のセクションでは、まずDiscount Factorを決める主変数である“金利”についてもう少し詳しく説明します。また、キャッシュフローの発生確率 \(Probability(CashFlow_i)\) については別の章で説明したいと思います。

さらに\(CashFlow_i (T_i)\)の値を決める方法ですが、これは契約と取引慣行で決まります。まさに実務の分野です。このサイトのテーマにもある通り、この部分を理解しないと、Cash Flow額を正確に計算できないので、金融商品の価格も正確に計算できず、実務では使えません。それも別の所で説明したいと思います。この3つのファクターがきちんと計算できて初めて、実務で使える金融商品の価格が計算できる訳です。  

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