上級編 4. Short Rate Models
4.3 Vasicek モデル
はじめに
まず最初に、Short Rate Model の嚆矢となった Vasicek モデルをみてみましょう。Vasicek モデルは、もともとは経済学的な均衡モデルとして、イールドカーブの形状を予想する為に提唱されたもので、デリバティブズの価格評価の為に使われる事を意図していませんでした。従って、このモデルは、当初イールドカーブとの整合性がなく、デリバティブズの価格評価に使うのは、不適切です。(論文のタイトルも“An Equilibrium Characterization of Term Structure :金利の期間構造の均衡モデル的特徴” というもので、イールドカーブがアービトラージではなく、経済的な均衡により形成される様子をモデル化したものです。)
しかし
- 以後の様々なShort Rate Modelの原型としてインスピレーションを与え、大きな影響を及ぼした事
- 最もシンプルで、瞬間短期金利から将来のイールドカーブの分布を求めるまでの解析のプロセスが比較的わかりやすい事
から、まずこのモデルを使って、そのプロセスを見てみたいと思います。