基礎編 4. オプション 

4.1 オプションの価格をどうやって決めるか?

4.1.1 不確実性をもったキャッシュフローの価値は期待値を計算

すべての金融商品はキャッシュフローの集合と見做せます。そして、その各キャッシュフローに、そのキャッシュフローの発生確率をかけ、Discount Factorを掛けて現在価値に換算し、それを合計したものが、その商品の価格になります。
すなわち、 

\[ PV of Financial Instruments=\sum CashFlow_i(T_i)\times Probability_{CashFlow_i}\times DiscountFactor(r(T_i)) \]

オプションのような、将来発生するキャッシュフローが不確実な金融商品の価格は、上の式で、\( CashFlow_i (T_i)\) と\( Probability(CashFlow_i)\) をうまく特定できれば、計算できます。 

オプションから実現する損益は、「オプション行使時の対象資産の価格が、どの程度In the Moneyになっているか(Pay-off)」に依存します。当然、現時点では行使時の対象資産の価格がどうなるか判りません。こういった不確実性を持った商品の価格は、行使時における対象資産の価格について一定の確率分布を想定し、その確率分布を使ってPayoffの期待値を計算し、それを価格と考える事ができます。 

期待値計算は、起こり得るすべての事象を場合分けして、それぞれの事象の発生確率に、それが起こった場合に受け取れる金額を掛け、合計すればいいだけです。

すなわち 

\[ 期待値=\sum_{i=1}^n M_i\times p_i \]

です。但し、n は発生し得る事象の数、\(p_i\) は各事象iが発生する確率、\(M_i\) は各事象i が発生した際に受け取れる金額。 

ヨーロピアンタイプのコールオプション価格で言えば、対象資産の価格が取り得る範囲をi=1 からn までと想定し、各\(M_i\) は、その対象資産の価格ごとのPay-off金額、すなわち
\( M_i=max(0,(UnderlyingPrice-Strike)) \) となります。それに、発生確率\(p_i\) を掛けて期待値を計算します。その期待値は、オプション行使日における期待値なので、最後にDiscount Factorを掛けて現在価値に換算します。まさに、最初の金融商品の価格式と同じです。 

\[ Option Price=\sum_i^n Payoff_i\times Probability(Payoff_i)\times DiscountFactor(r(T)) \]

Pay-offは、取引当事者同士の合意、すなわち契約で決まります。またDiscount Factorは現時点のイールドカーブから外生的に求まります。あとはオプション行使日の株価の確率分布さえ判れば、単純なオプションから複雑なオプションまで、すべての種類のオプション価格は、上記のような期待値計算の方法で求まるはずです。 

ここでは、発生しうる事象の数を有限として、期待値計算を、級数(\(\sum\))を使って行おうとしています。例えば、株価は呼び値(tick size)と値幅制限があるため、一定の期間内に取り得る価格は離散的かつ有限であり、オプション価格をこのように導出する方が、実務的に理解しやすいと思います。大半のオプションモデルは、株価のような確率変数を連続な実数値として考えるのは、解析のテクニックを使って解を求めようとする為です。しかし、オプション価格が解析解として求まらないケースも多く、その場合は、Treeを使ったり、有限差分法を使ったり、数値積分を使ったり、あるいはモンテカルロシミュレーションを使ったりして、数値解で近似するので、級数を使って期待値計算をする方が、より直感にフィットするのではないでしょうか。

 

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