基礎編 4. オプション 

4.3 Black-Scholesモデルの解説

4.3.1 モデルについて

まず、“Black-Scholesモデルとは何か?”から説明します。かの有名なオプション価格の計算式(4.2のデルタヘッジ戦略の所で使いました)ですが、この公式がしばしばBlack-Scholesモデルと呼ばれる事があります。私自身も、最初の頃は、そういう呼び方をしていました。正確には、Black-Scholesモデルから導出されたオプション価格の公式と言うべきでしょう。 

最初のセクション(4.1オプション価格をどうやって決めるか?)で、行使日における“オプション対象資産の確率分布”が判っていれば、どのようなオプションの価格でも求まると述べました。行使日の確率分布は、そこに至るまでの対象資産価格の確率過程から求めます。従って、言い換えると、対象資産価格の確率過程が判れば、どのようなオプション価格も求まるという事です。一般に、オプションモデルと呼ばれているものは、この確率過程を記述した数式の事を言います。金融商品の価格は、実際には様々な要因で変動します。それを限られたパラメータを使って、簡潔な数式で表現しているので、まさにモデルという言葉が相応しいでしょう。 

有名なオプションモデルの名前を、ざっと並べてみても、かのBlack-Scholesモデルを皮切りに、
Merton、Vasicek、Cox-Ingasoll-Ross、Ho-Lee、Hull-White、Black-Karasinski、Black-Derman-Toy、Heston、Stochastic Volatility, Jump Diffusion、CEV、HJM、BGK、LIBOR Market Model、SABR、Markov Functional
等々、他にも多数あります。これらはすべて、対象資産の価格変動をもたらす、確率変数の確率過程に付けられた名前です(Markov Functionalだけはモデルと呼んでいいのか、個人的には疑問に思っています)。そして、これらのモデルは、一般的に、ランダムな動きをする確率変数の確率過程として、次の様な式で記述されます。 

\[ \bf \it dX= \mu( )dt+ \sigma ( )dW \hspace{50mm} \]

 前のセクションでは、離散的にΔtとΔWを使っていましたが、ここでは連続時間での表現に変えています。モデルには、離散的なモデルも連続的なモデルもあります。様々な2項モデルや3項モデルは、確率過程を離散的な価格変化として表現したものです。 

離散時間でも連続時間でも、式の意味は

     確率変数Xの微小変動 = ドリフト項 + 拡散項

となっている点は、変わりません。また、\( \bf \it X、μ、σ、W \) を太字にしているのは、これらの値がベクトル、すなわち確率変数が複数(マルチファクターモデル)になる事もあるので、その記法に倣いました。また、ドリフト項の係数と拡散項の係数を、\(\bf \mu()、\sigma()\)、のように関数表現しているのは、この係数の定義の仕方で、モデルのバリエーションが分かれるからです。 

そして、Black-Scholesモデルは、株価の確率過程を、定数のドリフト項係数μと、定数の拡散項係数σを持つ、幾何ブラウン運動(geometric Brownian motion)する確率過程と仮定したものです。数式で表現すると、 

\[ dX=\mu Xdt+\sigma XdW \hspace{50mm} \]

となります。\(dW\) は、微小時間のブラウン運動する確率変数の変動、すなわちWiener過程を示しています。またμ とσ は定数と仮定しています。この確率過程を辿った後の株価の分布は、対数正規分布になります(即ち、株価そのものではなく、株価の対数が正規分布する)。あるいは、両辺をXで割って、 

\[ dX/X=\mu dt+\sigma dW \hspace{50mm} \]

と書き換えると、株価そのものではなく株価の微小時間での変化率が正規分布すると言っても同じ事です。実際に株価や外国為替レートの確率分布を調べると、完全では無いですが、対数正規分布に近い分布を示す事が多いようです。従って、できるだけ少ないパラメータによる数式で表現した“モデル”としては、うまく経済現象を表現できているようなので、有用性が高そうです。 

 

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