上級編 6.  Libor Market Model 

6.4  フォワードLibor間の相関の構造

6.4.1   はじめに

まず、6.38式の古典的LMMのSDEを再記します。 

\[ dL_i (t)=Drift(∙)dt+ϕ_i~ψ(t,T_i )~L_i(t)∙{\bf c_i(t)^{\top}∙dw(t)^Q}~~~~~~ i=1,2,…,n \tag{6.38} \]

この SDE の第 2 項(拡散項)の係数について、前のセクションで、\(ϕ_i\) と \(ψ(t,T_i)\) の役割を説明しました。これらは Volatility の期間構造と、その時間経過による推移を表現するファクターでした。このセクションでは、拡散項係数にあるもうひとつのファクター \(\bf c_i(t)\) について解説します。 

既に述べた通り、このベクトル関数は、フォワード Libor 間の相関の情報を持つファクターになります。フォワード Libor 間の n × n 次の相関行列を ρ とし、それを分解した n × m 次の行列を C とします。その行列Cの i 行目のベクトルが \(\bf c_i\) になります。すなわち 

\[ {\bf ρ=C∙C^⊤,~~~~~[C]=\left[ \eqalign{ &c_1 \\ &c_2\\ &\vdots \\ &c_n} \right], ~~~~~ c_i } ={c_{i1},c_{i2},…,c_{im}} \]

 (尚、このように分解された n 次正方行列 ρ のランクは、m 以下になります。) 

この相関の情報については、次の2点が大きな問題になります。 

  1. どうやって求めるか
  2. 求めた相関行列は、そのままでは使い物にならないので、それをどうやって補正するか

1.の相関の情報をどうやって得るかについては、大きく 2 通りの方法があります。ひとつは、過去データから、Libor 間の相関を統計的に求める方法です。おそらく大半の証券会社で、この方法がとられていると思います。もうひとつは、イールドカーブ・スプレッドオプションなど、相関に大きく影響をうけるデリバティブズ価格に内包している相関を求める方法です。この場合、信頼のおけるイールドカーブ・スプレッドオプションの価格が取得できる事が前提ですが、そのようなケースは限られていると思います。 

さらに、相関の情報は、Rebonato の公式(6.46式)にある通り、スワップション価格にも内包されており(式の右辺の積分は、Libor 間の(Terminal)共分散を求めている)、これに Calibration して求める方法も考えられます。しかしそうすると、もうひとつの Calibration 対象である Volatility の期間構造が、いびつな形になり、実務ではほとんど使われていないと思います。 

 1.で求めた相関行列は、過去データにしても市場価格からにしても、至る所で、不自然なでこぼこがあり、それをそのまま将来の予想に使うのは無理があります。そこで、求めた相関行列を補正する必要がありあます。その補正方法ですが、2段階になります。最初のステップはスムーズ化です。スムーズ化にあたっては、Libor 間の相関に見られる、いくつかの特徴的な性質を、うまく表現できるようにしなければなりません。過去のフォワードLibor間の相関を観察すると、いくつかの特徴的はパターンがあります。例えば、 

  • Libor 間の相関は概ね正の値を取る
  • 短期のテナーのLibor間では相関は低く、長期のテナー同士では高くなる傾向
  • Libor のテナーが離れるにつれて、相関は低下していく

などです。これらの特徴を満たすようなスムーズ化関数について、いくつかの方法が提示されています。その内、Andersen-Piterbarg本で解説されている方法を、後で説明したいと思います。 

相関行列をスムーズ化した後、さらにそれを実用的にするために、大幅なランクダウンが必要になります。すなわち、Libor 間の相関行列 ρ が n × n 次元の行列で、n は最大 80~160 になります。それに対し、Cは n × m 次元の行列であり、m< <n なので大幅にランクダウンされています。

相関行列の主成分分析を行うと、固有値の大きい方から3~5個で、相関行列の作用素としての働きの 95% 以上の説明力を持つ事が、様々な分析で分かっています。そこで、実務では ρ のランクを3~5に落として近似します。すなわち、行列 C の次元は 80×3 とか 160×5 とかになります。ランクをそれだけ落としても、モデルの性能はほとんど変わらず、一方で、モンテカルロシミュレーションの計算測度が大幅に改善します。効率的にランクを下げる方法(アルゴリズム)も、いくつか提示されています。それについても、後で説明します。 

 

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