基礎編 1 キャッシュフローと金利
1.4 複利 (Compounding)
同じ値の金利表示であっても、例えば年率1%の金利と言っても、複利の回数によって将来受け取れるリターン(利回り、Yield)が違ってきます。
ある金融商品に投資して得られた利息を、同じ商品に再投資して得られる収益は、それを再投資せず現金のままで保有した場合よりも、大きくなるはずです。この効果を複利(Compounding)と呼びます。従って、「金利」が年率1%という金利表示があったとしても、1年間における金利支払い回数が異なれば、1年後に受け取れるリターンの合計も異なります。金利の表示については、複利の回数も把握しておかないと、正確なリターンがいくらになるか判明しません。
金利1%(年率)の6カ月預金に投資し、6カ月後に同じ金利で6カ月預金に利息も含めて再投資したとすると、1年後のリターンは、
\[ \bigg(1+\frac{0.01}{2}\bigg)^2-1=1.0025\% \]
となり、1%より若干高くなります。
また、年率1%の3か月預金に投資し、同様の再投資を繰り返して1年後のリターンを計算すると
\[ \bigg(1+\frac{0.01}{4}\bigg)^4-1=1.0038\% \]
となり、さらに高くなります。さらに年率1%でオーバーナイト預金に投資し、毎日再投資を繰り返し1年後の利回りを計算すると、 \[ \bigg(1+\frac{0.01}{365}\bigg)^{365}-1=1.005\% \] となります。 年間の営業日日数は250日程度なので、実際に複利が出来る回数は、250回程度でしょうが、ここでは365回で計算しています。しかし結果に大差はありません。
一般的に、年率r%で年n回の再投資を行った場合の複利利回りは下記式となります。複利の回数が増えるほど、同じ利率でも利回りは高くなります。
\[ Yield\ per\ year = \bigg(1+\frac{r}{n}\bigg)^n-1 \]
このように、複利によって得られる1年のリターンは、年1回払いの金利に相当します。すなわち、年2回払い、年4回払い、年365回払いの金利1%は、それぞれ年1回払い金利の 1.0025%、1.0038%、1.005%に相当します。
金利が1%と表示されていたとしても、複利の回数を把握しておかないと、1年後の実際のリターンは異なってきます。
金利スワップの市場レートは、通常、固定金利のレートで表示されていますが、クーポンの支払い回数をきちんと把握しなければなりません。市場慣行によって、日本、米国、欧州でそれぞれ異なっています。そこで、金利の後に、複利の回数を表示しておくと、金利の意味が明確になります。実務では、次のような複利回数の表示方法をよく使います。
p.a.: per-annum 年1回
s.a.: semi-annual 年2回
q.a.: quarter-annual 年4回
m. : monthly年12回
c.c. : continuous compounding 連続複利