上級編 6.  Libor Market Model 

6.1.2 同値マルチンゲール測度と測度変換の公式 

6.1.2.3   測度変換の公式の導出(続き)

6.1.2.3.3   ラドン・ニコディム微分の確率過程(ニュメレールの相対価格から導出)

2つのニュメレール M、N は、想定している証券市場 x(t) に含まれています。(6.3)(6.3)’式は自然な確率測度( P 測度)下の SDE でしたが、これを、\(Q_M\) 測度下の SDE として記述してみます。 

\[ dM(t)=μ_M^{Q_M}(t,M(t))dt+ \bf σ_M(t,M(t)) ∙C∙dw^{Q_M}(t) \rm \tag{6.8} \] \[ dN(t)=μ_M^{Q_M}(t,N(t))dt+ \bf σ_N (t,N(t))∙C∙dw^{Q_M} (t) \rm \tag{6.9} \]

\(μ_M^{Q_M},~~μ_N^{Q_M} \) はそれぞれ、\(Q_M\) 測度下でのドリフト項係数ですが、ここでは特定せず、未知数のままにしておきます。これらは以下の解析のプロセスで消えてしまうので、あえて特定する必要はありません。一方、拡散項係数(Volatility関数)は、P測度のそれと同じです。(測度変換における分散不変の原則) 

(6.8)(6.9)式から、\(d\left(\frac{N(t)}{M(t)}\right) \) を導出します。これは先ほど、ラドン・ニコディム微分の微小変化は、(6.7)式で、\(dζ(t)=\frac {M(0)}{N(0)} d \frac{N(t)}{M(t)}\) となる事を示しましたが、この右辺を特定する為です。確率変数の積の微分は、Stochastic Leipnitz Rule を使って、下記のような形で表現できます。 

\[ \begin{align} d\left(\frac{N(t)}{M(t)} \right) & =d(N(t)∙ \frac 1 {M(t)})=\frac{1}{M(t)}dN(t)+ N(t)d\left(\frac{1}{M(t)}\right)+dN(t) d\left(\frac{1}{M(t)}\right) \\ & =\frac {1}{M(t)}dN(t)+N(t)d\left(\frac{1}{M(t)}\right)+d < N, \frac {1}{M(t)} > \tag{6.10} \end{align} \]

通常のライプニッツの法則と比べると、第3項の交差変分項 \( d < N,\frac{1}{M(t)} > \) が、消えずに残ります。交差変分は、それぞれの確率変数の拡散項係数の積から求まりますが、この項も後で消えるのであえて特定せず、そのままの形で解析を進めます。 

ここで、(6.10)式の右辺にある \(d(1/M(t)) \) は、(6.8)式から伊藤の公式を適用して下記のような形に導出できます。 

\[ \begin{align} d \left( \frac{1}{M(t)} \right) & = -\frac {1}{M(t)^2} dM(t)+ \frac {1}{M(t)^3} dM(t)dM(t) \\ & = - \frac{1}{M(t)^2} \left( μ_M^{Q_M}(t,M(t))dt+ \bf σ_M \rm (t,M(t)) \bf ∙C∙dw^{Q_M} (t)\right)+ \rm \frac {1}{M(t)^3} d < M(t),M(t) > \tag{6.11} \end{align} \]

但し< M,M> は M の 2 次変分。これも後で消えるのでここでは特定しません。この(6.11)式と、(6.8)、(6.9)式を(6.10)式に代入すると、ニュメレールの相対価格のSDE(言い換えるとラドンニコディム微分ζ(t)のSDE)が下記のような形で求まります。 

\[ \begin{align} d\left( \frac{N(t)}{M(t)}\right) =~& \frac {1}{M(t)} \left( μ_N^{Q_M}(t,N(t))dt+{\bf σ_N}(t,N(t)) {\bf ∙C∙dw}^{Q_M}(t) \right) \\ & - \frac{N(t)}{M(t)^2} \left(μ_M^{Q_M}(t,M(t))dt+ {\bf σ_M }t,M(t)) {\bf ∙C∙dw}^{Q_M} (t) \right) \\ & + \frac{N(t)}{M(t)^3}d < M(t),M(t)> + d < N,1/M(t) > \\ & =(…)dt+ \frac{N(t)}{M(t)} \left( \frac{ {\bf σ_N} (t,N(t))}{N(t)} -\frac{ {\bf σ_M}(t,M(t))}{M(t)}\right)^{\top } \bf ∙C∙dw^{Q_M}(t) \rm \tag{6.12} \end{align} \]

最後の行のドリフト項 \( (…)dt\) は、その前の行の dt 項および 2次変分項 d< > の合計になりますが、あえて記述しませんでした。というのは、市場がアービトラージフリーであれば、N(t)/M(t) は \(Q_M\) 測度下でマルチンゲールになるので、\((…)dt=0\) となるからです。それを加味して(6.12)式の拡散項のみを、(6.7)式に代入すると下記のようになります。 

\[ \begin{align} d \zeta (t) & = \frac{M(0)}{N(0)} d\left( \frac{N(t)}{M(t)} \right) \\ & = \frac{M(0)}{N(0)}\frac{N(t)}{M(t)}\left( \frac{ {\bf σ_N}(t,N(t))}{N(t)}-\frac{ {\bf σ_M}(t,M(t))}{(M(t)}\right)^{\top } {\bf ∙C∙dw^{Q_M} (t)} \\ & = \zeta (t) \left( \frac{ {\bf σ_N }(t,N(t))}{N(t)} - \frac{ {\bf σ_M} (t,M(t))}{(M(t)} \right)^{\top } \bf ∙C∙dw^{Q_M} (t) \rm \tag{6.13} \end{align} \]

これで、ニュメレールの相対価格の SDE から、ラドン・ニコディム微分の SDE が導出できました。 

 

6.1.2.3.4   ラドン・ニコディム微分の確率過程(ギルザノフの定理から導出)

(6.13)式は、ラドン・ニコディム微分 \(ζ(t)=\frac{dQ_N}{dQ_M}= \frac{N(t)}{M(t)} \frac{M(0)}{N(0)} \) が、2つのニュメレールの SDE の拡散係数から求まる事を示しています。一方、ラドン・ニコディム微分は、ギルザノフの定理から求める事もできます。ギルザノフの定理については、確率解析に関する様々な文献で紹介されているので、詳しい解説はそちらをご覧ください。かいつまんで言うと、ラドン・ニコディム微分の拡散項係数が、測度変換前と測度変換後のSDEのドリフト項の差から求まるという事です(下記の6.19式がまさにそれ)。  

 先ほど、ラドン・ニコディム微分について簡単に解説しましたが、そこでラドン・ニコディム微分は、初期値が 1 で、幾何ブラウン運動するマルチンゲールとなる確率変数と述べました。するとラドン・ニコディム微分を SDE で表現すると以下のような形になるはずです。 

\[ dζ(t)=ζ(t)~ \bf θ(t)∙dw^{Q_M} \tag{6.14} \]

但し、dw は \(Q_M\) 測度下の n 次元のブラウン運動で、θ(t) は n 次元のベクトルです。この θ(t) が、2つの確率測度の間の関係をつないでいます。 

まず、(6.14)の SDE を、伊藤の公式を使って解きます。マルチファクターの SDE なので、ややこしい解析プロセスですが、結果だけ示すと、ラドン・ニコディム微分は下記のような式で表せます。 

\[ ζ(t)=exp⁡\left[- \frac 1 2 \int _0^t |{\bf θ(s)}|^2 ds+ \int_0^t \bf θ(s)^T∙dw(s)\right] \tag{6.15} \]

せっかく解けましたが、ここでは、この式を求める事にはあまり意味はありません。問題は 拡散項係数 θ(s) がどういう形になるかという事ですが、ギルザノフの定理を使ってそれを求めます。 

まず、n 次元の証券市場 x(t) の、\(Q_M\) 測度下での SDE が、下記の形で判明しているとします。 

\[ \bf dx(t)=μ^{Q_M} \rm (t,x(t))dt + \bf Σ(t,x(t))∙ C∙ dw^{Q_M} \rm (t) \tag{6.16} \]

これは P 測度下での SDE (6.3)式と、拡散項係数 \(\bf Σ(t,x(t))∙C\) は同じですが、ドリフト項係数 \(\bf μ^{Q_M}(t,x(t))\) は、ニュメレール M を基準としたものになります。P測度下でのドリフト項を、客観的に特定するのは不可能ですが、特定の同値マルチンゲール測度を使った SDE では特定が可能です。例えば、x がある証券のニュメレール M との相対価格ならば、このドリフト項は 0 になります。ここではそれが既に求まっているとします。求めたいのは、その既に求まっている \(\bf μ^{Q_M} (t,x(t))\) から、\(Q_N \) 測度に測度変換した場合の x(t) の SDE です。
 ここで求めたい \(\bf x(t)\) のSDEが、下記のような形になると仮定します。測度変換しても、拡散項係数は変わらないので、下記式の内、\( \bf Σ(t,S(t)) ∙ C\) は既知で、\(\bf μ^{Q_N} (t,S(t))\) が不明です。 

\[ \bf dx(t)=μ^{Q_N} \rm (t, {\bf x(t)})dt+ \bf Σ(t,x(t)) ∙ C∙ dw^{Q_N} \rm (t) \tag{6.17} \]

そこで、\(Q_M\) 測度下でのドリフト項と\(Q_N\) 測度下でのドリフト項との関係式を、ギルザノフの定理を使って求めます。 ギルザノフの定理によれば、\(Q_M~と~Q_N\) 間のラドン・ニコディム微分は、下記のような形になります。ギルザノフの定理を解説している文献は、大半がスカラーの確率変数を使って説明しています。ここでは、ベクトル表記と行列表記を使っているので、判りにくいかもしれません。ベクトルと行列の各要素(スカラー)に分解するとどうなるか想像しながら、注意深く読み進めて下さい。 また、\(\bf Σ(t,S(t))∙C\) は、逆行列\( \left( \bf Σ(t,S(t))∙C \right)^{-1}\) が存在するとします。  (Brigo-Mercurio本が下記のような表記法でギルザノフの定理を解説しているので、それに従いました。判りにくければ、ギルザノフの定理を解説している文献は他にも多くあるので、そちらをご覧下さい。)

\[ ζ(t) ∶= \frac{dP^{Q_N}}{dP^{Q_M}}~|_{\scr F_t} ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~\\ =exp⁡\left[ - \frac 1 2 ∫_0^t |( \bf Σ(t,x(t))∙C)^{-1} (μ^{Q_N}(t,x(t))-μ^{Q_M}(t,x(t)))|^2 \rm ds \\ ~~~~~~~~~~+∫_0^t \left[\bf (Σ(t,x(t))∙C)^{-1}(μ^{Q_N}(s,x(t))-μ^{Q_M}(t,x(t)))\right]^{\top } dw^{Q_M}(s) \right] \tag{6.18} \]

これを(6.15)式と比べれば判る通り、(6.15)式の θ(t) は、上の式の中の下記の部分に該当します。 少しでも判りやすくするために、最後の右辺を加えました。要は、2つの同値な確率測度下でのドリフト項の差を、共分散 \((Σ・C)^2 \) の平方根で割った値になるという事です。

\[ \bf θ(t)=\left(Σ(t,x(t))∙C\right)^{-1}∙\left(μ^{Q_N}(t,x(t))-μ^{Q_M}(t,x(t))\right) = \frac{drift^{Q_N}-drift^{Q_M}}{\sqrt {Covariance} } \tag{6.19} \]

これを(6.14)式に代入すると、 

\[ dζ(t)=ζ(t) \bf \left[(Σ(t,x(t))∙C)^{-1}∙\left(μ^{Q_N}(t,x(t))-μ^{Q_M}(t,x(t))\right)\right]^{\top }∙dw^{Q_M} \tag{6.20} \]

となります。これは、ギルザノフの定理を使った、ラドン・ニコディム微分の SDE になります。右辺に、\(Q_M\) 測度下でのドリフト項と\(Q_N\) 測度下でのドリフト項との関係式が現れています。あともう一歩です。 

 

6.1.2.3.5   測度変換の公式

以上で、測度変換の公式を求める準備が整いました。 

(6.20)式と、(6.13)式はいずれもラドン・ニコディム微分の確率過程のSDEです。その拡散項係数は一致するはずであり、そこから\(\bf μ^{Q_N}(t,x(t))\) を未知数とする次のような方程式が導けます。 

\[ \bf \left( \frac{σ_N (t,N(t))}{{\rm N(t)}}- \frac{σ_M (t,M(t))}{{\rm M(t)}} \right)^{\top }∙C =\left(Σ(t,x(t))^T∙C\right)^{-1}\left(μ^{Q_N}(t,x(t))-μ^{Q_M}(t,x(t))\right) \]

ここで両辺に C を作用させ、さらに整理すると、 

\[ \bf μ^{Q_N}(t,x(t))=μ^{Q_M}(t,x(t))+Σ(t,x(t))∙ρ∙ \left(\frac{σ_N(t,N(t))}{N(t)} -\frac{σ_M (t,N(t))}{M(t)}\right)^{\top } \tag{6.21} \]

となります。これで、x の\(Q_M\) 測度下のドリフト項係数 \(\bf μ^{Q_M} (t,x(t))\) が判れば、\(Q_N\) 測度下でのドリフト項が求まります。これが、Brigo-Mercurio本で紹介されている測度変換の公式です。この式は、ベクトル表記ですが、これを個別証券のドリフト項の式に分解すると下記のようになります。 

\[ μ_{x_i}^{Q_N}(t,S(t))=μ_{x_i}^{Q_M}(t,S(t)) + {\bf σ_{x_i}}(t,x_i(t))∙ {\bf ρ}∙\left(\frac{ {\bf σ_N}(t,N(t))}{N(t)} - \frac{ {\bf σ_M}(t,M(t))}{M(t)}\right)^{\top } \tag{6.22} \]

となります。(6.21)式は、Brio-Mercurioの文献“Interest Rate Models”(2006版)の 33ページ;Proposition 2.3.1 で導出された式に該当します。 

 

<  拡散項係数の測度変換の公式  >

測度変換の公式は、上記のようなドリフト項の変換公式の他に、拡散項の変換公式でも表現できます。(6.16)式と(6.17)式の右辺が一致するので、下記の等式が成立すます。 

\[ \bf μ^{Q_M}(t,x(t))dt+ Σ(t,x(t))∙C∙ dw^{Q_M}(t)=μ^{Q_N}(t,x(t))dt+Σ(t,x(t)) ∙ C∙ dw^{Q_N}(t) \]

ここから、右辺の \(\bf μ^{Q_N}(t,x(t)) \) に(6.21)式を代入すると 

\[ \begin{align} \bf Σ(t,x(t))∙ C∙ dw^{Q_N} (t) & = \bf μ^{Q_M}(t,x(t))dt+Σ(t,x(t)) ∙ C∙ dw^{Q_M}(t)-μ^{Q_N}(t,x(t))dt \\ & = \bf μ^{Q_M}(t,x(t))dt+Σ(t,x(t)) ∙ C∙ dw^{Q_M} (t) \\ & ~~~~~~ \bf -\left[μ^{Q_M}(t,x(t))+Σ(t,x(t))∙ρ∙\left(\frac{σ_N (t,N(t))}{N(t)} -\frac{σ_M(t,N(t))}{M(t)} \right)^{\rm \top} \right]dt \\ & = \bf Σ(t,x(t)) ∙ C∙ dw^{Q_M}(t)- Σ(t,x(t))∙ρ∙\left(\frac{σ_N(t,N(t))}{N(t)} -\frac{σ_M (t,N(t))}{M(t)} \right)^{\rm \top} \end{align} \]

さらに、両辺に \(\bf (Σ(t,x(t)))^{-1}\) を作用させると 

\[ \bf C∙dw^{Q_N} = C∙ dw^{Q_M}(t)-ρ∙\left(\frac{σ_N ({\rm t,N(t)})}{\rm N(t)} -\frac{σ_M ({\rm t,N(t)})}{\rm M(t)} \right)^{\top} dt \tag{6.23} \]

となります。これで、拡散項係数の測度変換の公式が求まりました。 

 

<  ニュメレールの SDE が幾何ブラウン運動のモデルの場合   >

さて、証券市場全体の確率過程を記述した SDE である、(6.3)、(6.3)’式や、その中のニュメレールの SDE である、(6.8),(6.9)式で、拡散係数を \(\bf Σ(t,x(t)),~~σ_M ({\rm t,M(t)}),~~σ_N ({\rm t,N(t)})\) という一般的な記述にしていました。これは、後々、様々な Volatility 関数での モデルでも使えるようにするためです。 

ところで、初期のLMMでは、Liborの確率過程を幾何ブラウン運動すると仮定しています。そこで、測度変換の公式を、幾何ブラウン運動の場合に特定して導出します。後で、初期の LMM におけるドリフト項の調整を解析的に求める場合は、ここで導出される測度変換の公式を使います。

まず、(6.3)式や(6.8)(6.9)式の、SDE のドリフト項係数と拡散項係数の関数形を、以下のように定義します。ここでも、SDE をベクトルと行列で表記するので、一見判りにくいですが、1ファクターの幾何ブラウン運動のSDEをマルチファクターに変えただけであり、注意深く数式を見れば、それほど難しくありません。 

\[ \begin{align} & \bf μ^{Q_M}(t,x(t))= Diag(x(t))∙m^{Q_M}(t) \\ & \bf μ^{Q_N}(t,x(t))= Diag(x(t))∙m^{Q_N}(t) \\ & \bf Σ(t,x(t)) = Diag(x(t))∙Diag(v(t)) \\ & \bf σ_M ({\rm t,M(t)})= v_M (t) \rm M(t) \\ & \bf σ_N ({\rm t,N(t)})= v_N (t) \rm N(t) \end{align} \]

但し 

  • \( \bf Diag(x(t))\) : 証券市場の価格ベクトル x(t) を対角要素に持つ n × n 次の対角行列
  • \( \bf Diag(v(t))\) : 各証券の SDE における変化率 Volatility \(  {\bf v(t)}=\{v_1 (t),…,v_n \} \) を対角要素に持つ n × n 次の対角行列
  • \( \bf m^{Q_M}(t),~~m^{Q_N}(t) \) :それぞれ \(Q_M、~Q_N\) 測度下での、x(t) の SDE におけるドリフトベクトル。
  • \( \bf v_M(t),~~v_N(t)\) :ニュメレール M, N の SDE における変化率 Volatility ベクトル(但し、M,N 番目の要素のみスカラ値の Volatility が入り、他の要素は 0 となるベクトル)

これらを使って(6.3)式を書き換えると、 

\[ \begin{align} & \bf dx=Diag(x(t))∙m^{Q_M}(t)dt+Diag(x(t))∙Diag(v(t))∙C∙dw^{Q_M} (t) \\ & \bf dx=Diag(x(t))∙m^{Q_N}(t)dt+Diag(x(t))∙Diag(v(t))∙C∙dw^{Q_N} (t) \tag{6.24} \end{align} \]

さらにニュメレールの SDE も以下のようになります。 

\[ \begin{align} & dM(t)=M(t) m_M^{Q_M}(t)dt+M(t) \bf v_M(t)∙C∙dw^{Q_M} (t) ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ \\ & dN(t)=N(t) m_N^{Q_M}(t)dt+N(t) \bf v_N(t)∙C∙dw^{Q_M} (t) ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ (6.24)' \end{align} \]

これらの SDE をもとにした測度変換の公式は、下記のようになります。 

\[ \bf m^{Q_N}(t)=m^{Q_M}(t)+Diag(v(t))∙ρ∙(v_N (t)-v_M (t)) \tag{6.25} \]

また、この式の右辺第2項は、\( \ln \bf x\) と、\(\ln \frac N M \) の対数の交差変分としても表現可能で、そうすると、下記のような表現になります。 

\[ \begin{align} \bf & m^{Q_N}(t)=m^{Q_M}(t)+ \bf \frac {d <\ln x(t),~ \left(\ln \frac{N(t)}{M(t)}\right)^{\top}>}{\rm dt}~~~~~~~~~~~~~~~~(6.25)' \\ ~~~& or~~~~\bf m^{Q_N}(t)=m^{Q_M}(t)+ d\ln x・d\left(N(t)/M(t)\right)^{\top } \end{align} \]

この式は、証券市場全体のドリフト項ベクトルの変換公式になりますが、これを個別証券に分解すると下記のようになります。 

\[ m_{x_i}^{Q_N}(t)=m_{x_i}^{Q_M}(t)+\bf v_i(t)∙ρ∙(v_N (t)-v_M (t)) \tag{6.26} \] \[ m_{x_i}^{Q_N}(t)=m_{x_i}^{Q_M}(t)+ \frac{d < \ln x_i~,~\ln \frac{N(t)}{M(t)}>}{dt} ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~(6.26)' \]

古典的な LMM のドリフト項を求める場合は、こちらの測度変換の公式を使います。 

 

以上で測度変換の公式の導出プロセスの説明を終わります。次のセクションで、いよいよ Libor Market Model の解説を始めたいと思います。 

 

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