基礎編 3. スワップ
3.4 サブプライムショックとリーマンショック
3.4.1 サブプライムショックからリーマンショックへ
スワップやデリバティブズ市場が急拡大していく中で、様々な事件、事故が起こりましたが、その集大成のようなものが、サブプライムショック、リーマンショックで発生しました。
この金融危機の震源地は、米国のサブプライムモーゲージローンを対象資産にした証券化商品です。クレジットリスクが高い為、本来なら販売が簡単でない商品が、様々な証券化のテクニックで、あたかも優良クレジットのような装いを纏い、一般の機関投資家に大量に販売されていきました。住宅ローンの審査の段階で、借り手にも貸し手にも、モラルハザードや詐欺的行為がかなり頻繁にあったようです。また証券化の段階でも、投資銀行や、格付け機関が、高い収益インセンティブにつられて、対象資産のクレジットの質に対する極めて甘い分析のまま、アグレッシブに組成・販売が行われました。その結果、巨額の不良資産が金融システムに積み上がっていき、最終的にそれが破綻しました。
ここまでなら、現物の金融商品の世界で、デリバティブズの問題ではありません。しかし、これらの証券化商品を対象資産とするクレジットデリバティブズが、リスクを増幅する形で、危機を深刻なものにし、さらに不透明な形でリスクが伝搬していきました。その為、誰がどの程度の損失を抱えているかが誰にも判らず、お互いが疑心暗鬼になり、その結果短期の資金市場が麻痺して流動性クランチを引き起こしました。資金調達に苦しむ金融機関は、在庫となる証券を売却せざるを得ず、危機がサブプライム証券に留まらず、一般的なクレジット市場にも拡大していきました。
サブプライム証券の暴落は2007年の初頭に始まりましたが、2008年に入ると、金融市場全体に流動性クランチとクレジットクランチが広がり、9月のリーマンのデフォールトで危機が一気に爆発しました。
サブプライムショックからリーマンショックにかけての金融危機については様々な文献が出ていますが、米国の議会が主導した調査報告書が非常に詳しいです。(Financial Crisis Inquiry Report)