基礎編 5. リスク量の計測
5.3 マクロ的なリスク指標
5.3.3 Expected Shortfall
VARの概念が発表された当初、統合的な市場リスクを測る指標としてもてはやされ、次第に世界中の金融機関に取り入れられるようになりました。さらに、BIS規制の中にも取り入れられ、VARによって市場リスクを計測する手法が奨励されました。
ところが、サブプライムショックとリーマンショックにより金融市場が大混乱に陥った際、VARによるリスク量が、実際に発生した損失額を過小評価していた事になりました。その反省から、BIS-III、BIS-IVではVARに代わってExpected Short-fallという概念を使う事になりました。これは、ある閾値を超えた損失について、その期待値を計算するものです。VARが閾値そのものなのに対し、それより大きい損失の期待値がどの位になるかを計算するものです。 E{損失額|損失額>閾値}
VARよりはましですが、まだVARの持つ本質的な欠点は残っています。また、めったに起こらない事象の確率分布を予想するのは至難の業で、計算結果を盲目的に信じるのは危険です。