上級編 7.  Local Volatility Model とStochastic Volatility Model 

7.3  Stochastic Volatility Model

7.3.1    はじめに

確率分布の、正規分布や対数正規分布からの歪みを表現するために、Local Volatility Model と並んで使われるモデルとして、Stochastic Volatility Model があります。Local Volatility Model が、主にVolatility Skew を表現するのに用いられるのに対し、Stochastic Volatility Model は、Volatility Smile を表現するのに用いられます。さらには、両者を組み合わせて、skew と smile の両方をうまく表現できるモデルも数多く提示されています。むしろ、Local Volatility Model や Stochastic Volatility Model が、それぞれ単独で使われる事はあまり無く、両者を組み合わせたモデルの方が一般的です。このセクションでは、この両者を組み合わせたモデルの中で、特に実務でもよく使われている次の2つのモデルを中心に、解説します。このセクションも、主に Andersen-Piterbarg本“Interest Rate Modeling”を参考にしています。 

1. Local Volatility Model として Displaced Log-normal Model、 Stochastic Volatility Model として Heston Model を組み合わせた、Displaced Log-normal Heston Model(“DLN-H”)、 

2. Local Volatility Model として、CEV Model、 Stochastic Volatility Model として、Volatility が幾何ブラウン運動するモデルを組み合わせた SABR Model 

これらのモデルから、ヨーロピアンオプション価格を求める為、解析的近似解や数値積分による近似解を導出するテクニックがいくつか紹介されています。その導出過程では、特性関数、フーリエ変換、特異摂動法、マリアバン解析、などの難解な数学のテクニックが使われます。もちろん、こういった難解な数学的テクニックを避けたければ、シンプルにモンテカルロシミュレーションを使えば、どんな複雑なモデルでもオプション価格は導出できます。実際に、エキゾチックな商品の価格評価は、モンテカルロシミュレーションを使わざるを得ないケースが殆どです。しかし、その場合でも、事前にモデルパラメータの Calibration が必要になり、その時に、ベンチマーク商品となるヨーロピアンオプションの価格を、解析解あるいは解析的近似解で計算できれば、Calibration の高速化が図れます。というより、複雑なモデルであっても、実務で使うには、ヨーロピアンオプションについては高速な価格計算アルゴリズムが得られる事は、実務上許容範囲となる時間内で Calibration を行う為には必須です。 

< モデルの一般形  >  

ここで解説する、Local Volatility Model と Stochastic Volatility Model の混合モデルの一般的な形は、以下のような Stochastic Differential Equation(”SDE”)になります。解析を容易にする為、パラメータのいくつかは定数と仮定しています。 

\[ dS(t)=λ~φ(S(t),z(t))~dW(t) ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ \tag{7.38} \] \[ dz(t)= θ~(m(t)-z(t))dt+η~ψ(z(t))~dZ(t) \tag{7.39} \]

但し 

  • \(z_0=1,~~~~~~~~ \langle dZ(t),dW(t) \rangle = ρ~dt,~~~~~~ λ,θ,η,\) は定数。
  • \(m(t)\) は正の値を取る Deterministic な関数。
  • \(φ(S(t),z(t)),~~~ψ(z(t))\) は滑らかで Deterministic な関数。

1行目の SDE は、対象資産価格の確率過程を記述する SDE で、λ は、Volatility の水準を決めるパラメータで、ここでは定数としています。また S の拡散項係数にある関数 \(φ(S(t),z(t))\) は、\(S(t)~と~z(t)\) に依存します。Volatility を \(S(t)\) に依存させる事により Local Volatility の特性を持たせるとともに、\(z(t)\) は Stochastic Volatility のファクターとなり、その確率過程は、2行目の式で記述されます。 

2行目の SDE は、中心回帰するドリフト項を持ち、拡散項係数に skew関数 \(ψ(z(t))\) を持ちます。中心回帰するドリフト項を持つことで、Volatility Smile カーブが、時間の経過とともに、緩やかになっていく様子を表現できます。ただ、ドリフト項をゼロにしたモデルもあります。 

 

目次

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