基礎編 2. 金利の期間構造
2.4 Par CurveからDiscount CurveとForward Curveの導出
2.4.3 Discount FactorとZero Coupon RateとForward Rateの関係
前のセクションでPar CurveからDiscount FactorをBootstrapping法により導出する手順を説明し、さらにDiscount FactorからZero Coupon Rate、Forward Rateを導出する方法を説明しました。
そこから明らかなように、Discount FactorとZero Coupon RateとForward Rateは密接に関係しており、その内のどれかひとつが判れば、他の2つの値も簡単に導出できます。また、Discount Factorが判れば、Par Curveも再現できます。
これらについて、もう少しQuants的に説明します。まず記法を定義しておきます。
- \(P(t,T)\): t 時における満期日がT 時のDiscount Factor(観念的なゼロクーポン債価格)
- \(r(t,T)\): t 時における満期TのZero Coupon Rate(ゼロクーポン債利回り、但し連続複利による年率)
- \(r(t,t)\):t 時における瞬間短期金利(連続複利による年率)
- \(r(0,0)=r(0)\) :現時点の瞬間短期金利
- \(F(t,T_1,T_2 )\):t 時におけるフォワード期間\((T_1,T_2 )\)に対応するフォワード金利(連続複利による年率)
- \(f(t,T)\):t 時におけるT 時の瞬間フォワード金利(連続複利による年率)
現時点 t = 0 とします。
まず、Discount FactorとZero Coupon Rate(連続複利)との関係は
\(P(0,T)=e^{-r(0,T)T}\) の表記はもっと簡便な記法として\(P(T)=e^{-rT}\) というのもよく使われます。r を左辺にもってきて、 \( r=-\ln{P(T)} /T \) とすれば、T 満期のゼロクーポン債価格(Discount Factor)から、簡単に連続複利による利回りが導出できることがわかります。
次に、t 時におけるフォワード期間\( (T_1,T_2 )\) に対応するフォワード金利(連続複利ベースで表示)を、\(T_1\)満期のゼロクーポン債価格と\(T_2\)満期のゼロクーポン債価格から求めるのは次式になります。
\[ F(0,T_1,T_2)=\frac{-\ln{P(0,T_2)/P(0,T_1)}}{T_2-T_1},\ \ \ P(0,T_2)/P(0,T_1)=e^{F(0,T_1,T_2)(T_2-T_1)} \]フォワード金利の計算において、フォワード期間を限りなくゼロに近づけると、Instantaneous Forward Rate(瞬間フォワード金利)になります。
\[ f(0,T)=\lim_{\tau \to 0}F(0,T,T+\tau)=\lim_{\tau \to 0}\frac{-\ln{P(0,T+\tau)/P(0,T)}}{((T+\tau)-T)}=-\lim_{\tau \to 0}\frac{\ln{P(0,T+\tau)}-\ln{P(0,T)}}{\tau}=-\frac{\partial\ln{P(0,T)}}{\partial T} \]すなわち、T時のInstantaneous Forward RateはT満期のゼロクーポン債価格の対数をTで微分した値(但し−符号が付きます)になります。
さらに、\(f(0,T)\) のTを限りなく0に近づけると現時点の瞬間短期金利となり、一般的に\(r(0)\) と表記されます。
\[ \lim_{\tau \to 0}f(t,t+\tau)=f(t,t),\ \ \ f(0,0)=r(0) \]以上の式から判る通り、特定の時点\( (T_1,T_2,…,T_n)\) のDiscount Factorが判れば、その各時点に対応するZero Coupon Rateや、Forward Rateが判ります。そして、その各点を適当な方法で補間すればDiscount Curve、Zero Coupon Curve, Forward Curveを描く事ができます。また、Forward Curveについては、フォワード期間の取り方により無限の数のカーブを描く事ができます。実際に実務で使われるのは、フォワードLIBORのカーブやInstantaneous Forward Rate(瞬間フォワード金利)のカーブです。