上級編 6.  Libor Market Model 

6.6   モンテカルロシミュレーション

6.6.4   分散減少法(Variance Reduction Techniques)

6.6.4.5    重点サンプリング法(Important Sampling)

層別サンプリング法では、各層で生成されるサンプル数を、その層の確率測度に比例させず、層別分散の期待値が高い領域に恣意的に多く配分しても、推定誤差が低減できるのでした。但し、その場合は、尤度比を使って、期待値計算の際に、確率測度を補正する必要があります。すなわち、勝手に確率測度を変更してサンプルを生成しても、期待値計算の際にきちんと調整できるのであれば、元の確率測度で行った MCS での期待値演算と同じ結果が導出できるのでした。 

重点サンプリング法は、同様の発想で、層別ではなく確率分布全体の確率測度をわざと変換してサンプルを生成する方法です。最も簡単な測度変換は、サンプル生成の元になる標準正規乱数の分布全体を動かす事です。そうする事によって、Payoff の期待値が高い領域に、より多くのサンプルが集まるようにしておけば、同じサンプル数で、推定誤差を小さくできます。例えば、ストライク価格が Deep Out of the Money にあるヨーロピアンオプションでは、Payoff がプラスになる領域は、確率測度が低く、生成されるサンプルの殆どが Out of The Money の領域で発生します。すると、大半のサンプル値が 0 となり、サンプル平均を計算するのに無駄なサンプルが大量に生成される事になります。これを、標準正規乱数の確率分布の平均を、0 から、あえてオプションの In the Money の領域にシフトすれば(正規分布の確率測度変換は、平均を動かすだけです)、より多くのサンプルが In the Money の領域で生成され、その結果、サンプル平均の推定誤差を小さくできます。層別サンプリング法では、確率測度の調整を、層ごとに、層別分散を吟味しながら行いましたが、重点サンプリング法は、このように確率分布全体の測度変換を行う操作になります。 

この方法も、確率測度を、どの方向にどの程度動かせばいいかは、個別の商品特性を見ながらアルゴリズムを考える必要があります。また、この方法と、層別サンプリング法を組み合わせて、極めて高い分散低減効果を得られるような実証実験の結果が様々な文献で紹介されています。 

分散低減法としては、やや難解なテクニックであり、かつ似たような効果は、層別サンプリング法でも得られるので、ここではこれ以上の説明はやめておきます。 

 

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