上級編 8 クレジットデリバティブズ
< イントロダクション >
基礎編のクレジットデリバティブズのチャプターでは、最もシンプルでポピュラーなクレジットデリバティブズである、Credit Default Swap(“CDS”)の、標準的な価格評価方法について解説しました。そこでは、ISDA Standard Modelを使って、イールドカーブおよびクレジットカーブを構築し、それを使って CDS の Default Cash Flow と Premium Cash Flow の現在価値を計算する方法を紹介しました。
上級編では、トランチ分けされた Collateralized Debt Obligation(“CDO”)の商品性と価格評価方法について解説します。トランチ分けについては、後程解説しますが、このスキームの CDO の価格評価では、担保となるクレジットポートフォリオ内のデフォールトの相関を、どうモデルに取り込むかが、最も重要な課題になります。なので、そこを中心に解説したいと思います。
デフォールトの相関が評価価格に大きく影響するクレジットデリバティブズとしては、CDO の他に、First To Default, Second To Default,…(それぞれ FTD STD という略称で呼ばれています)といった商品もあります。これらは 1990 年代後半に登場しましたが、2000 年代に入ってからはあまり取引されず、人気商品は CDO に移っていきました。さらに、リーマンショック後は殆ど取引されていないので、この商品の解説は省略します。と言っても、トランチ分けされた CDO の方も、今ではあまり取引されていないのですが。なので、以下の解説は、CDO トランチの価格評価方法を理解しどうやって使うか、と言うよりも、それらが、いかに問題があったかについて理解する為のものとして、読み進めていって下さい。